IT×業務効率化

契約のあらゆる面を21世紀型へリ・デザインする『クラウドサイン』

弁護士ドットコム株式会社 ゼネラルマネージャー 橘氏

膨大な契約締結に関する書類の束を郵送する手間や、はんこリレーという慣習。
日本において契約締結書類におけるはんこ文化は根深く、業務において少なくない時間がその書類の処理に使われています。本来であればもっとやるべき業務があるにもかかわらず、慣習的に使われ続ける“はんこ”という手間。
そんな慣習を解決すべく、Web上で契約締結を実現するクラウドサービスが「クラウドサイン」です。クラウドサインを運営する弁護士ドットコム株式会社は、日本最大級の弁護士検索・法律相談ポータルサイトを運営する法律のプロフェッショナル。
今回は、同社でクラウドサイン事業を統括するクラウドサイン事業部 部長・橘大地氏に話を伺い、クラウドサインが歩んできた道のりと解決する課題、目指すビジョンを伺いました。

これだけ電子契約が普及していないからこそ、やる意味があった

はじめに、クラウドサインの立ち上げについて伺います。クラウドサインがリリースされたのは2015年10月。同社が上場した直後のことだったと言います。

「上場当時は、弁護士ドットコムと税理士ドットコムというマッチングプラットフォームを提供し、売り上げを構築していました。ただ、その頃から次のフェーズを見据え、対企業向けのサービスを立ち上げられないかという話が上がり、2015年1月から“新規事業としてどの分野に参入していくか”という検討を開始しました。その結果生まれたのが、クラウドサインです」

同社がクラウドサインという事業に行き着いた背景には、同社会長の元榮氏をはじめ、弁護士経験のあるメンバーが感じていたはんこ文化による原体験にありました。

「私自身、契約交渉の法的アドバイスをする立場で弁護士をしていましたが、日本はフィックスまでこぎつけても、締結までにかなりの時間を要します。はんこ文化がこれだけ浸透しているのは世界でも日本だけで、契約締結にかかる時間のロスは社会課題として大きいです。そこが大きなきっかけとなりました」

海外はPDFでサインして取り交わすのが一般的。まず書面とはんこで契約を結んでからビジネスを始める日本と比べると、PDFにサインで済ます海外では、ビジネスのスタートに数週間もの差が出ることもあるといいます。この差は変化を起こす価値が非常に大きいと橘氏は考えます。

「日本は、契約をクラウド化することの価値が明らかにあります。先進国で電子契約がこれだけ普及していない国は日本くらいです。はんこ文化が強く、他の国では一般的なプラットフォーマーも参入してこれません。だからこそはじめる意味があると考えました」

電子契約はよいという空気感をつくる

契約をクラウド化することは日本のビジネスにおいて一定の価値があるとはじめたクラウドサイン。2015年10月のリリース時、はんこ文化が根強いこともあり、「当初は、普及させるには苦労するのではないか」と橘氏自身も考えていたと言います。しかし結果は逆のものでした。

「リリースから4カ月で導入企業社数1,000社を突破しました。我々が想定していたよりもずっと早い段階で多くの反響をいただいたのですが、導入数を伸ばすにはそれなりの苦労がありました。企業が明日からはんこを捨てて取引を行うかというと、やはり心理的ハードルは高く、導入したいという声を多くいただいたり、営業活動も活発に行っていましたが、実際に使用していただくまでにはそれなりの時間がかかりました。」

橘氏はこの苦労を想定し、事前に乗り越えるためのプランを大きく2つ考えていたといいます。

「ひとつは、社会の実態としてクラウドサインを普及させること。まずは大企業に使っていただけるよう、プレゼンを重ねサービスを理解していただくという一般的なロジックを通していきました。もうひとつは、空気感づくりが大事だと思ったので、弁護士業界、法律業界への理解促進を図りました。法律業界や弁護士業界のセミナーに登壇し、弁護士や業界団体の長に理解を深めてもらい、電子契約はよいという空気感づくりを行いました」

企業がクラウドサインの導入を検討する中で、法的観点を顧問弁護士に聞いた際に、弁護士から「やるべきですよ」といわれるのと「ちょっとわからないですね」といわれるのでは企業の導入意思に大きな差が出ます。弁護士の皆様から一定のご理解をいただく事が大事ということは、弁護士ドットコムを運営した経験からも同社が特に強みを持っていたポイントでした。

「過去の経験から見ても、弁護士ドットコム自体が業界や弁護士に愛されるように意識して運営を行ってきたことで、現在に至ると思っています。これはスタートアップの歴史を見ても同様で、既存の業者と良好な関係を築かなければディスラプターとして認識され、反対運動が起きてしまいます。その業界の価値観と寄り添う道を日々模索することが大事なのです。われわれは、専門家や多くの企業様に価値を提供し、その方たちが普及してくれるような動きはとても重要だと考えました」

弁護士側への空気作り、大企業から普及させるなど戦略的な展開を経た結果、クラウドサインは当初想定よりもかなり早い速度で成長。2018年2月時点で導入企業社数は17,000社、累計契約締結件数は18万件にものぼります。導入企業は、大企業や紙が多い業界といわれる金融、不動産、人材領域の企業も名を連ねているといいます。

「大手金融系ですと野村證券様やクレディセゾン様、人材系ではパーソルキャリア様などにも導入いただきました。大手企業の場合、セキュリティや社内承認のためにプレゼンを行うこともありますが、本当に紙で困っていらっしゃるので、クラウドサインがどういった価値を提供できるかをロジカルにお伝えすれば、時間はかかりますが契約へと繋がっています」

クラウドサインを支えるカスタマーサクセス


画面右下にチャット画面が表示。常時、複数名がサポートする

クラウドサインが事業として成長を続けられる背景には、サービスの価値や利便性に加え、サービスの活用によって顧客が成功を支える「カスタマーサクセス」の効果も大きいといいます。実際同社では、初期段階からカスタマーサクセスにリソースを割いてきました。

「弊社のチャットサポートは、『日本で一番速いのではないか』という自信が持てるくらい、返信スピードが速いです。常時複数のスタッフがスタンバイしております。カスタマーサクセスで継続利用を促せなければ、いくら導入いただいても穴の開いたバケツに水を注ぐようなものです。どんなに営業をしても使用されないサービスは解約されますから、使っていただけるるサービスを目指して、日々お客様のサポートを重要視しています」

同社のカスタマーサクセス部隊は、主に初期の導入段階、中期的な拡大段階、安定的に定着させる段階など、企業の導入フェーズごとに随時サポートを提供。一気に普及させるのでは無く、少しずつ試していくことを大切にしているといいます。

「お客様には導入を決めていただく段階で、どの契約でご利用され始めるかを検討いただきます。ここでは『いきなり全社的にすべての契約をクラウドサインで』ではなく、『まずは、この契約で』『この文書で』という設計が重要になってきます。そこでクラウドサインが便利に活躍するという成功体験を積んでいただいた上で次のフェーズに拡大していきます。最初はミニマムで契約し、ロードマップに沿って徐々に拡張していくのです。そこに寄り添っていくことが、われわれのようなクラウドサービスでは特に重要です」

導入の方法を一歩間違えると、途端にハードルの高いサービスに見えてしまう恐れもあります。クラウドサインでも「説明コストがかかるもの」などでの利用を勧めないなど、適切な提案を通して継続利用を促しているといいます。

古いルールや慣習を21世紀型へリ・デザインする

最後に、今後の展開について話を伺います。まずクライアント数を拡大していく面でいうと、2017年までに多業種へ展開してきたノウハウを活かした戦略を考えているといいます。

「これまでの経験値で導入事例や各業界のノウハウも貯まり、業界に合わせた使い方を提案・提供できる自信もついてきました。様々な業界のクライアント様にご利用いただいていますので、電子契約が当たり前というカルチャーをより早く浸透させていければと考えています」

クラウドサインがカバーするクライアント、業界を広げることで、世の中全体に電子契約が当たり前というカルチャーを作る。同社がその先に見据えるのはあらゆる契約にまつわるものにあるといいます。

「我々は、商慣習によって今まで放置されてきた古いルールや慣習を、21世紀型にリ・デザインすることを目指しています。その1つがクラウドサインであり、リ・デザインすべきものは『契約』のあらゆる面にあります。それに際し、今年は契約管理の再発明に着手しています。紙の契約をクラウドサインで取り込み「倉庫で保管してよいのか」ということを世に問いかけていきたいと考えています」

プロフィール
橘大地
弁護士ドットコム株式会社 ゼネラルマネージャー クラウドサイン事業部 部長
弁護士。2015年同社入社後、リーガルテック事業「クラウドサイン」の事業責任者の他、ブロックチェーン技術を活用した「スマートコントラクト・システム」、AIなどのリーガルテック事業の研究開発を担当。

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