IT×業務効率化

定例業務はロボに、人は創造的な仕事を。クラウドRPA『BizteX』

BizteX株式会社 代表取締役 嶋田氏

働く上で、エクセルでの交通費や領収書の精算などの「定例業務」が発生することがあります。このような定例業務をPC上のロボットに代行してもらうRPA(Robotic Process Automation)というテクノロジーが、いま注目を集めています。

今回は2017年にクラウドRPA『BizteX cobit』をリリースしたBizteX株式会社 代表取締役 嶋田光敏氏に、起業の経緯からクラウドRPAの具体的な活用方法までを伺いました。

定例業務をPC上のロボットが代行するクラウドRPA『BizteX cobit』

『BizteX cobit』は、PC上のロボットに定例業務を覚えさせ、人のかわりにそのロボットが定例業務を代行するクラウドRPAです。定例業務の業務フローをロボットに記憶させることで、ボタンひとつでその業務をロボットが遂行してくれます。

RPA自体は10年以上前からあるテクノロジーですが、オンプレミスのものが主流で、環境構築に時間や予算がかかったり、RPAの作成にプログラミングの知識が必要であったりと、さまざまな課題を抱えていました。

嶋田「BizteXではクラウドネイティブでRPAを開発することで、お客様による環境構築が不要で機能追加を容易にすることを目指しました。ロボットが動いた分だけAWS(Amazon Web Service)のように、従量課金が行われるため、従来のオンプレミスよりも費用がかからない点も特徴です。また、コーディング不要でロボットを作成できるような操作性を実現しました」

オンプレミスRPAの課題解決を目指すだけではなく、クラウドRPA特有のメリットも実装していると、嶋田氏は言葉を続けます。

嶋田「1つは機能追加や改善が容易なことです。利用いただいている企業の方からのフィードバックをもとに、月に100件以上の機能改善や追加を行っています。2つ目はデータ蓄積が可能なこと。業務データを収集し、機械学習にかけることで機能レコメンドや条件分岐予測などに活かすことができます」

ただ、完全に自動化できない部分もあります。たとえばGoogleではロボット対策のために二段階認証が行われ、ロボットがログインできないようなケースも。また、デスクトップアプリの場合は使用できず、社内の基幹系システムへのアクセスの場合は、固定IPやVPN接続など個別接続方法が必要になります。

「定例業務の多くはエクセルを使用する業務。エクセルはアップロードして利用できるようにしており、デスクトップアプリでなければできないことは少ないのが現状です」と、嶋田氏は語ります。完全にロボットに任せきりというわけではなく、ロボットと人で業務を分担し、効率化を進めていく視点が重要になるようです。

「自分の登る山を決めろ」「志を語れ」先人たちの言葉が起業のきっかけに

そんなBizteXを創業した嶋田光敏氏はソフトバンクの出身。ソフトバンク時代に法人営業から新規事業の企画や立ち上げを経験する中で、BizteXを創業するきっかけとなるアイデアを見つけました。

嶋田「ソフトバンクで新しくプロジェクトを立ち上げる時に、どうしてもリサーチや入力業務などが発生します。その度に部下に業務をお願いするのですが、部下が本当にやりたいのは定例業務ではなく、プロジェクトの企画などの創造的な仕事でした。“やりたいこと”と“やるべきこと”のギャップがあることにモヤモヤしていたんです」

そのなかで嶋田氏は「テクノロジーの力を借りればもっと人間が創造的な業務に集中できる環境を作れるのではないか」と考えるようになります。業務に取り組む一方で、嶋田氏はソフトバンクアカデミアや社会人向けMBAのグロービスに通っていました。そこでの学びや仲間に受けた刺激が、嶋田氏に起業のきっかけを与えることになります。

嶋田「ソフトバンクアカデミアでは孫さんに“自分の登る山を決めろ”と言われるんです。人生をかけて取り組むべきものを見つけられれば、もう半分は成功したようなものという教えです。一方でグロービスには経営の知識を学びに行ったはずなのに、学長の堀さんは“志を語れ”と説くわけです。学んだ知識を世の中のためにどう使うか、を大切にしろという教えでした」

嶋田氏は学んでいく中で、”自分がこの先の人生で命をかけて取り組むべきことは何か”と考えるようになります。ソフトバンクアカデミアでの同期の存在も起業を後押ししました。

嶋田「アカデミアにはソフトバンク社員以外にさまざまな分野で活躍する起業家も学びに来ています。社内で新規事業を担当していたものの、彼らのようにゼロからビジネスを立ち上げている人とは圧倒的な差を感じてしまったんです。また、孫さんが“この中で一番脛に傷があるのは自分だ、ここにいる人間は自分よりも挑戦していない”という言葉にも影響を受け、起業を決意しました」

自分が取り組むべきものは何かと考えた末にたどり着いたのが「定型業務から人間を解放する」ことでした。日本の労働人口が減少していくこと、テクノロジーが進化してシンギュラリティの世界が来ること。ちょうど、今このテクノロジーとサービスが求められるのではないか、嶋田氏は考えました。

嶋田「テクノロジーの発達によりRPAが注目を集めていました。ですが日本市場を見てみると、既存のRPAは構築期間が長く、多額の費用がかかる。その上エンジニアリングの技術がなければ使いこなせないという明確な負があったんです。クラウドRPAを導入することで、ここにある課題を解決できるのではないかと考えるようになり、BizteXを創業しました」

95パーセントの業務量削減に成功した企業も

『BizteX cobit』のβ版が公開されたのは、2017年7月。約6ヶ月が経った取材時点(2018年1月)では企業アカウントが200件以上、作成されたロボットが1500件以上、シナリオの実行回数は3万回以上に上るといいます。導入している業種は広告代理店や人材系企業が多く、「業界特性上新しい定例業務がどんどん増えるここと、クラウド環境の構築に柔軟なこと、働いている方が新しいテクノロジーの導入に前向きなこと」が要因だと嶋田氏は語ります。

これまでRPA自体の普及率は5パーセント以下と決して高くはなく、新規でRPA導入を行った企業も多いそうです。

嶋田「金融系の会社はクラウド環境の導入に慎重で、オンプレミスのものを使っている企業が多く存在します。そのかわりに『BizteX cobit』は、ネット系企業を中心にしており、これまで価格の面でRPAを導入できなかった中小企業の方にも導入いただいています。明確な棲み分けができているんですね」

並行して、セキュリティ要件が高いお客様もいますので、当然のごとく脆弱性診断をしたり、社内体制もISO27001を取得予定など、BizteXでもセキュリティ強化に力を入れています。

『BizteX cobit』は実際にどのような業務に活用されているのでしょうか。たとえば、広告代理店ではSEOランキング調査や広告運用レポート処理、人材系では競合媒体の情報取得や販売実績管理などの業務の自動化に貢献しているそう。導入している企業の中でも、特に業務効率化に成功した事例を教えてくれました。

嶋田「スウェーデンに本社がある船舶代理店ウィルヘルムセンは、日本にある約20個の港に色んな国からやってくる船の出入データを集めています。それまで手作業でやっていたため業務に年間168時間かかっていたものが、『BizteX cobit』を導入することで約4時間まで短縮できました。年間作業時間を95パーセント削減という効率化に成功したんです」

IT業界などのテクノロジーに精通している業界以外でも『BizteX cobit』は導入されています。その理由として、導入提案のあとに勉強会を開催していることが挙げられるそうです。

嶋田「BizteXのメンバーがお客様先へお伺いして、現場の実務担当者の方と1時間程度、『BizteX cobit』を使いこなすための研修会を行っています。実践を通してBizteXの使い方を学び、その効果を実感することで、ご本人も自分の業務を自動化するイメージが沸くこと、また上司の方も導入の説得がしやすくなるんですね」

ロボットのマーケットプレイスを目指す

最後に嶋田氏は『BizteX cobit』の今後の展望について教えてくれました。業務にまつわる書類やレシートを撮影し、自動的に認識するための画像認識技術の向上や、日本以外の国で事業展開するための多言語対応など、いくつかの打ち手が存在します。そのなかで嶋田氏は、「ロボットのマーケットプレイスを目指す」と語ります。

嶋田「現在は『BizteX cobit』を導入し、自社で使いたいRPAをクライアント企業の担当者の方に作成いただいています。ですが、同じようなRPAを作成している企業は多いはず。RPAを作成した企業がマーケットプレイスにアップロードし、それを使いたい企業が購入することができれば、その都度作成する手間が省けますよね。そんなロボットのマーケットプレイスが実現できれば、業務のさらなる効率化を目指せるはずです」

「人間をルーティンワークから解放し、 創造的な仕事に集中できるクラウドソリューションを提供していく」——BizteXのコーポレートサイトにはこのようなビジョンが掲げられています。

さまざまなデジタルツールの登場で効率的になった業務が存在しますが、いまだに定常的に発生する雑務は数多く存在します。人間が創造的な仕事に集中できる未来を獲得するために、クラウドRPAが果たせる役割は大きいでしょう。

プロフィール
嶋田光敏
BizteX株式会社 代表取締役
Jフォン株式会社、Vodafone株式会社、ソフトバンク株式会社で通信商材を企業向けに提供する法人事業に約14年従事。営業時代は達成率No,1を獲得、2012-15年の3年間は法人事業の新規プロジェクト、新規事業開発の室長を歴任。法人向け電力小売りPJ、IBM WatsonPJ、法人版Pepper PJなど数多くの事業立ち上げを実施。 2015年BizteXを創業。これまで多くの事業立ち上げを行う中で、PC上で行うルーティンワークの無くして人間がもっと高付加価値業務へ時間を使うべきだと感じて、クラウドRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)「BizteX cobit」を開発・提供している。2017年11月より正式ローンチし、多くの企業へ提供中。

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