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自力で調べてみた!銀行業界の非対面チャネル強化状況(2022年度版)【やまざき調べvol.38】

掲載日:2022年5月31日更新日:2024年2月21日

こんにちは。スパイラル株式会社山崎です。

やまざき調べを書きはじめて4年目になりますが、未だに初期にご紹介した「自力で調べてみた」シリーズに新しいコラムを出したときと同じくらいの反応をいただいています。

他社・他行の施策実施状況がみんな気になるんですね。

せっかくニーズのある情報なら、きちんと調べ直してアップデートしていきたいです。今年は数ヶ月に一度、業界別の各施策のオンライン化(Web・スマホアプリを用いる)状況を調べて記事にしてみます。

今回は「銀行」業界の各取り組みについて調べてみました!

「この業界について調べてほしい」「この取組についても調査して欲しい」といったお声も大歓迎です!

調査対象

金融庁の銀行一覧より、下記の97行を対象に調査を実施しました。

  • 都市銀行: 4行
  • 地方銀行: 62行
  • 信託銀行: 13行
  • その他銀行: 18行
  • 合計: 97行

調査方法

インターネットで検索し、各銀行のコーポレートサイトに記載されている情報を集計しました。

あくまでWeb上に載っている情報を手作業で一つ一つ調べた結果をまとめているため、実情は異なる場合がございます。予めご了承下さい。

調査内容

下記の3つの申請について、PCやスマホを使って手続きができるか、どのような方法で手続きできるのかを調べました。

  • 既存・新規両方のお客様との取引・契約として「住宅ローン」
  • 個人のお客様との新規契約として「口座開設」
  • 既存のお客様の情報変更として「住所変更」

住宅ローン

口座を保有している方向けのサービスとして、住宅ローンの契約方法についても調べてみました。

住宅の購入は人生最大の買物とも言われているだけあり、住宅ローンは興味を持っている方と接点を作ってから契約に至るまでのプロセスが長いです。

それぞれのフェーズごとに、どれくらいオンライン化されているのか調べてみました。

あくまでWebサイト上で確認できた情報のみに限っているため、後半の手続き方法を正確に把握しきれていない可能性は考えられます。ご了承下さい。

調べてみたところ、契約までWebでできる銀行は全体の11.4%でした。

住宅ローンを検討されている方向けの来店予約やシミュレーション、仮審査などは過半数の銀行でオンライン化されています。

一方で、本審査以降もWebで手続きが進められる銀行は全体の1割程度とぐっと落ち込んでいます。

ググってみると、仮審査は3~4行で申し込むのがスタンダードなんですね。本審査よりも多くの審査対応が必要になるし、本審査に進むお客様を一人でも多く獲得したいから、仮審査までのオンライン化率が高いんだろうな。

業界別に見ると、都市銀行とその他銀行は住宅ローンの契約がWeb完結できる割合が高いです。その他銀行の中でも、店舗を持たないネット銀行は契約までWebで完結するケースが殆んどです。

住宅を購入するにはローンの契約以外にもやることが多いため、対面で契約する銀行では、そうしたお客様の不安や面倒をしっかりサポートできる強みがありそうです。

一方で、日経新聞によれば、最近は住宅ローンの低金利競争がなかなか厳しいようです。業務効率化やコスト削減のため、本審査や契約手続きのオンライン化が進むこともあるのかもしれません。

また、住宅ローンは長期的な関係性を作れることが銀行側のメリットでもあります。契約やその後の支払い、契約変更手続きの際など、お客様が定期的にIBやアプリに訪問するような動線ができていると、継続的な接点づくりにも役に立つのではないでしょうか。

口座開設

調査対象の97行のうち、個人向けの預金口座を提供している全81行を対象に、スマホやPCで口座開設する方法について調べました。

個人向け預金口座を提供している81行を100%として、受付方法ごとに導入率を示しています。

※合計しても100%にはなりません。

今一番メジャーな口座開設の受付方法は「Webフォーム」

スマホアプリで口座開設を受け付けている銀行には、インターネットバンキング用のアプリ内で受け付けているケースと、口座開設専用のアプリで受け付けているケースがあったので、前者は「IBアプリ」、後者は「口座開設アプリ」に分けて集計しています。

3年前に口座開設受付状況を調査した際、それぞれの導入状況は下記のとおりでした。

  • IBアプリ: 10.5%
  • 口座開設アプリ: 37.5%
  • Webフォーム: 34%
  • 専用機: 0%

当時は地銀(今回調査対象に含めていない第2地方銀行を含む)のみを対象に調査したため正確に比較はできませんが、そもそもデジタルで口座開設を受け付けている銀行の割合が増えたため、アプリもフォームも導入率が増加しています。

特にWebフォームを使う銀行が14%ほど増加し、アプリに変わって今一番メジャーな受付方法になりました。

本人確認方法はeKYCが一般的

PCやスマホで口座開設を受け付けている銀行がどのように本人確認を行っているのかについても調べてみました。

個人向けの預金口座を提供している銀行81行を100%として、受付方法ごとに集計しています。

※合計しても100%にはなりません。

以前口座開設時の本人確認方法について電話でヒアリングを行った際には、本人確認方法として転送不要郵便を採用する方針の金融機関が多かったようですが、2年経って形勢逆転。

非対面の口座開設といえば、eKYCが当たり前になりつつあります。

SNSを見ていても、eKYCは口座開設がすぐ終わるという評価が高いようです。

eKYCとアプリは業態別の導入率がとても近いですが、口座開設アプリはほとんど全てでeKYCが使われています。

Webフォームから受け付ける場合、本人確認方法はeKYCや郵便などパターンが分かれるようです。

eKYCが犯収法で許可される前から転送不要郵便などは許可されていたため、最低限の改修をしてそのまま残しているケースも多いのでしょうか…

eKYCはWebブラウザでも利用できます。スマホアプリは運用コストが高いため、IBと口座開設両方をアプリ化しなくても、口座開設はWebフォームのみにすることでコストを削減しても良いかもしれません。

住所変更

最後に、売上とは関係ない申請手続きとして、非対面の住所変更方法ごとに導入率を調べました。

※合計しても100%にはなりません。

住所変更は、IBのマイページや銀行アプリ上で申請できる銀行が全体の7割を締めました。

IBにログインせずにWebで住所変更を受け付けるケースもあるのかなと思っていましたが、本人確認の観点からかほとんどありませんでした。

まとめ

今回は、銀行業界で「口座開設」「住宅ローン」「住所変更」をPCやスマホで受け付ける方法について実態の調査を行いましたが、「PCやスマホなど、デジタルで完結する受付方法が一つでもあるか」「ない場合、郵送や来店などとデジタルを組み合わせた受付方法があるか」で改めて集計し直してみました。

住宅ローンはオンラインで完結できる銀行がほぼメガバンクとネット銀行しかないので、地銀や信託銀行にとっては差別化できる施策の一つになるかもしれません。

オンライン完結する住宅ローンサービスがリリースできれば、他行と差をつけられるということに見えなくもないですね。

住宅ローンの受付をオンライン化されたい方がいらっしゃいましたら、ぜひご相談ください!

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