金融の記事

ARTICLE
金融

脱炭素化とDX推進の関連性について考えてみた【やまざき調べvol.34】

掲載日:2021年12月21日更新日:2024年3月15日

こんにちは!金融カスタマーサクセス部山崎です。

金融本部では、今年に入ってから3人のメンバーが加わりました。中途採用メンバーを前職の業界に近い事業部に配属し、貢献(恩返し)してもらう「恩返し配属」が始まり、金融本部にも業界経験者が配属されています。聞きたいことがたくさんあるので、しつこい先輩として嫌われないように注意したいです。

金融本部、パワーアップして来年もがんばります!

ところで、りそなHDが2030年までにESG投資商品を3兆円販売するというニュースを見て、今年は「脱炭素」、「SDGs」、「ESG」などのワードを毎日のように目にしているなあと感じました。

実際に調べてみると、脱炭素化に対応しないとビジネス上影響があるようです。脱炭素化社会に乗り遅れず、コロナにも負けず、2022年も明るい未来をアップデートするべく、「脱炭素」とDXの関連性について考えてみました!

そもそも「脱炭素」とは?

「脱炭素」とは?

「脱炭素」って、CO2の排出量が少なくて環境に優しいことを言うのかな

・・・と、ふんわり構えていましたが、違いました。「脱炭素」とは、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする取り組みのことです。「実質ゼロ」とは、排出量から森林などの吸収量を差し引いた結果をゼロにすることを意味しています。

地球温暖化により2兆4千億ドル経済損失する?

「脱炭素」の取り組みが増えている背景には、環境問題の悪化があります。

2020年に国内で発生した自然災害を振り返ると、台風10号による農作物被害は149.3億円、7月豪雨による農林水産関係被害は2207.9億円にものぼります。(*1)

災害対策だけで国が赤字になりそう

世界的に見ても、2020年9月のアマゾン森林火災件数は昨年から61%増加。同年5月には、スーパーサイクロン「アンファン」が観測史上最大の風速75mでインドやバングラデシュを襲い、128人の死者を出しました。(*2)

自然災害と地球温暖化には関連性があるとする考えが有力です。これまでにも国際的に地球温暖化対策は行われていましたが、努力むなしく1992年以降のCO2排出量は60%も増加しています。(*3)

こうした状況から、国際労働機関(ILO)では、地球温暖化により2030年までに世界的に2兆4千億ドルの経済損失が発生すると推測しています。

そうした状況を打破するために、日本を含めた各国で発表しているのが”2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す”「2050年ネットゼロ」です。(*4)

この宣言をきっかけに、国内でも脱炭素の取り組みが広まっています。

トヨタの豊田社長が”100年に一度”と表現しているくらい世界的に大きな動きなんですね

脱炭素に取り組まないとビジネスに影響を受ける!

投資商品にもなっているほどなので金融業界の皆様は耳タコのトピックかとは重々承知ですが、私やまざきは正直あまり脱炭素に関心がありませんでした。

環境問題に対応することって、企業のブランドイメージ向上以外にメリットあるのかな?

・・・くらいの印象でいました。実際には、脱炭素に取り組まないとさまざまな点でビジネスに影響を及ぼすリスクがありそうです。

融資を受けられなくなるかもしれない

日本生命では、今年の1月に”社債と株式の投資先について、2050年に全体で二酸化炭素(CO2)排出量がゼロ”になることを目指すと発表しました。脱炭素の取り組みが一定期間ない場合は社債を売却する姿勢を表明しています。

こうした姿勢を表明する金融機関が増えれば、脱炭素への取組状況が企業評価に直結し、融資が受けられるかどうかを左右するようになります。

取引先との契約が切れるかもしれない

Appleは、2030年までにサプライチェーンの100%をカーボンニュートラルにすることを約束しています。Apple製品の生産ラインに関わっている企業の場合、脱炭素への取り組み状況によって今後取引ができなくなるかもしれません。

Appleのような環境ビジョンを打ち出す日本の企業も増えており、今後は長く取引を続けるためにも脱炭素への取り組みが必要になってきます。

税金・手数料を余分に払うことになるかもしれない

カーボンニュートラルの実現に向けて、「カーボンプライシング」と呼ばれる課税措置を採用・強化する国が拡大しています。日本国内では、2012年からCO2排出量に応じて課税する「地球温暖化対策のための税」が導入されていますが、今後引き上げや新しい税制の導入などが検討されています。

その他、世界的には炭素国際調整措置(CBAM)がEUやアメリカで検討されはじめました。炭素国際調整措置とは、気候変動対策を行っていない国からの輸入品に対して、炭素コスト分だけ課金する措置のことです。JETROによれば、EUが今年の7月に世界で初めて規則案を提出し、2026年から支払いを義務化する方針です。

もし日本が「気候変動対策なし」の国とみなされてしまうと、EUやアメリカへの輸出が難しくなってしまいます。国内税制が変わる恐れもあるので、企業ごとに見ても、税負担が増えるリスクがあります。無駄なコストを発生させないためにも、脱炭素への取り組みが必要になるようです。

脱炭素に取り組むにはまずDXが必要?

2026年にはEUで炭素国際調整措置(CBAM)が開始し、2030年にはAppleがサプライチェーンのカーボンニュートラル化が予定されています。国・地方脱炭素実現会議が発表している業界ごとの重点対策を見ても、2035年までに新車販売をガソリン自動車から電動車へ100%移行させるなど、大きな変革が求められています。

2021年10月のパリ協定で閣議決定した長期戦略では、地球温暖化対策を”産業構造の大転換と力強い成長を生み出す”ためのカギであるとし、具体的な対策の一つとしてイノベーションを挙げられました。

こうした早いスピードでの変革が求められる中、どの業界でも必要な最初の取り組みはDXではないでしょうか。

過去の記事で簡単にご紹介していますが、DXとはデジタルを使いビジネスそのものの変革を行うことです。古いシステムを刷新し、デジタル技術を活用することで、市場の変化に迅速かつ柔軟に対応したり、素早く新たな製品やサービスを国際市場に展開できる力が付きます。

今はまだDXに後ろ向きな中小企業が多いですが、大きな変革が求められる中で、1社でも多くの企業がDXで変革への基礎体力をつけられれば、「100年に一度の大改革」をみんなで乗り切れるかもしれません。

調べてもあまりたくさん載っていないものの、脱炭素とDXのつながりはもう普遍的なものなのでしょうか。ぜひ皆様のご意見を聞いてみたいです。

100年に一度の大改革を乗り切るために

日本国内でも、自社の環境問題への取り組みや目標を「環境ビジョン2050」として発表している大企業は増えています。その一方で、中小企業はなかなか脱炭素への取り組みを進められていません。

ITR「IT投資動向調査2021」によれば、日本で一番DXを重要視している業界は金融・保険業界です。実際に、日経新聞によれば、三井住友FGやSOMPOホールディングスなどでDX教育が始まっています。その一方で、小売、サービスといったコロナ禍が事業の存続に打撃を与えた業界ではDXの重要度は低く、従業員数5千人以下の企業の回答でも昨年比で重要度は落ちています。

脱炭素化やDXというと、送配電含めたエネルギーの最適化やAI・IoTを活用した効率化など、どちらかというと規模の大きな話がイメージされがちです。しかしながら、前述の通り、企業間の取引や融資・手数料などの面で、中小企業にも大きな影響があるということは認識しておかなければいけません。

経産省も中小企業のカーボンニュートラル、DXを後押しする税制改正を検討しているようですね!(詳しくはこちら)

コロナ禍を生き抜くことに必死な中小企業が脱炭素社会で置いてけぼりにならないために、金融業界は何ができるでしょうか。資金的な援助はもちろんですが、どこよりもDXに関心がある金融業界だからこそ、中小企業のDXの手助けができるのではと感じています。

SPIRAL®でも「カーボンオフセット証書」、発行できます!

弊社で長年評価をいただいている取り組みとして、カーボンオフセット証書の発行があります。

当社は、2010年8月に日本で初めて独自の算出メソッドを開発し、マルチテナント型のクラウドサービスでは困難とされていた、ユーザーごとのCO2排出量の可視化に成功しました。

2021年12月現在、2020年中にスパイラルをご利用いただいている方は、「カーボンオフセット証書」を発行できますが、今回の証書発行は、2009年分の初回から数えて12回目になります。

なお、「SPIRAL® ver.1」を構成するコンピューターと通信機器が2020年中に排出したCO2全量を2021年2月24日にオフセットし、カーボンニュートラル化しております。証書にて皆さまにお知らせするCO2排出量は、当社がオフセットクレジット商品を購入する方法で既にオフセット済みですので、皆さまがあらためてオフセットする必要はございません。

ご希望の方は、こちらからお手続きください!


※本記事の内容の信頼性、正確性、真実性、妥当性、適法性及び第三者の権利を侵害してないこと等について、当社は一切保証いたしません。また、本記事の利用によって発生したいかなる損害その他トラブルにおいても、当社に一切の責任はないものとさせていただきます。

参考文献

*1「災害に関する情報」(農林水産省 閲覧日:2021年12月15日)


*2「2020年 世界の大規模火災・自然災害」(2021年2月、海外情報センター 閲覧日:2021年12月14日)


*3「Net Zero by 2050 – Analysis – IEA」(2021年5月、国際エネルギー機関 閲覧日:2021年12月14日)


*4「日本の排出削減目標」(2021年7月6日、外務省 閲覧日:2021年12月14日)